謝韵が初めてJIAのワークキャンプに参加したのは2004年8月、大学2年の夏休みだった。好奇心から参加したが、村で出逢った村人の生き方に感動し、たくさんの勇気をもらった。村人に何かを返したいと思い、村に行き続けた。また、一緒にキャンプに参加する大学生と一緒にいると、一度も孤独を感じることがなかった。在学中、夏休みや冬休みに村で約2週間滞在するワークキャンプに4回と、短期滞在で数えきれないほど村を訪れている。
謝韵にとってJIAワークキャンプの価値はなんだったかと問うと、彼女は「行動を起こせば、自分が変えられる社会があると学べたこと」と答えた。
「普通、何かをしようと思っても、見返りや効果がなければやらなくなる人が多いでしょ。でも私たちには、ワークキャンプで何かが変わっていくのを実際に見てきた。私たちが初めて村に行ったとき、村人の人生はもう90%終わってしまっていたけれど、そこから新しい世界を知って、諦めていたことも実現して、村人自身が生きるって素晴らしいと感じることができるようになった。」
「中には、ワークキャンプは村人のためにならないという人もいた。誰も使わないトイレやコンクリートの道を作っても意味がないって。でも、私はそうは思わない。初めは使い慣れないトイレも、村人が1人、2人、4人と行くようになれば、村の衛生環境は絶対に良くなる。道だって、確かに足や眼が不自由な村人は歩けないかもしれない。でも、その道から外の人が村へ入って来られるようになって、村人にとってかけがえのない交流が生まれた。成果がすぐ見えなくても、大切なこと、変わることはたくさんあるはず。」
大学を卒業してから7年以上が経った今、彼女が足しげく通った村に、大好きだった村人はもういない。学生時代決して離れることはないと思っていたキャンパー仲間も、それぞれ異なる場所で、異なる道を歩んでいる。村やワークキャンプ、仲間との関わりは、時間と共に少しずつ変化している。彼女自身、大学を卒業してしばらくは、もっと頻繁に村に行きたい、ワークキャンプと直接関わっていたいという思いが強かったが、仕事や結婚、出産など、自分を取り巻く生活が変わり、それができなくなることに対する罪悪感を覚えたこともある。
けれど、これまで自分の歩んできた道を思い返すと、ワークキャンプで得た勇気や信念、価値観は、彼女を成長させ続け、人生を豊かにしてくれていると感じるという。ワークキャンプに参加してから、今までは想像もできなかったようなことを考え、実行してきた。それにより、自分の生命そのものが豊かになった。今彼女は、ワークキャンプ当時の学びを日常生活で生かしている。
例えば、彼女がチャリティーやボランティア、環境保護、食品安全に対して高い意識を持っていることも、ワークキャンプと無関係ではない。当時ワークキャンプに一緒に参加した同年代の日本人の考え方に刺激を受け、自分の周辺の環境に意識を向けるようになった。商品、食料を購入するときは、出来る限り環境に害のないものを選んでいる。自分たち一人一人が購入するものをいかに選ぶかで、環境だけでなく、未来を変えることが出来る。ひとりの力は小さいけれど、行動を持ってたくさんの人に伝え続ければ、多くの人が同じように考えるようになると信じている。また、より多くの人、特に子供たちに自然の素晴らしさを伝え、一緒に環境を守っていけるようにと、“鳥類、動物、昆虫、植物自然解説員”というトレーニングを受けた。現在、自然の中で私たちがどのように楽しむことが出来るかを人に伝える、簡単な技術を持っている。
2004年、好奇心からワークキャンプに参加した女子大生が、自分の力が社会を変えられると信じて行動するようになるとは、当時誰が想像しただろうか。たくさんの人に信じる想いを伝え続ける彼女の姿は、本当に頼もしい。謝韵のような若者の成長は、JIAが社会にもたらした一つの重要な価値であると言えるだろう。